車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修
ホンダZR-Vは2022年秋に一時的に国内販売が終了したCR-Vの後継車種として、ホンダの日本国内市場における最上級SUVに据えられたクルマだ。先頃CR-VのHEVモデルが日本市場にも復活したが、ZR-Vも継続して販売されている。デビューから3年を過ぎ、このほど一部改良と特別仕様車が発売された。
まずは、2022年当時に発売されたZR-Vについて簡単に解説しよう。同車は11代目シビックをベースに開発されたクロスオーバーSUVである。全長×全幅×全高は4570mm×1840mm×1620mm、ホイールベースは2655mmで、3代目から5代目(先代)CR-Vのサイズに近い。サスペンション形式は前輪がストラット式、後輪がマルチリンク式。駆動方式はFFと4WDから選べる。
発売時にはガソリンエンジン仕様とe:HEV仕様の2種類が用意された。ガソリンエンジン仕様は178ps/24.5kg-mを発生する1.5L直噴VTEC・DOHCターボ+CVTの組み合わせ。e:HEV仕様は141ps/18.6kg-mを発生する2.0L直噴DOHCエンジン+184ps/32.1kg-mを発生するモーター+電気式CVTの組み合わせ。e:HEV仕様(FF)のWLTCモード燃費値は22.1km/Lで、ベースとなったシビックの24.2km/Lに対して約10%ダウンに収まっている。e:HEV仕様(FF)同士で車重を比較すると、ZR-Vはシビックより約100kg重い。
さらに細かく見ていくと、e:HEV仕様(FFのXグレード)のWLTCモード燃費値は22.1km/Lのまま変わりないが、今回の改良で市街地モードが19.7km/Lから22.0 km/Lに向上した。逆に郊外モードは24.7km/Lから23.6km/Lに、高速道路モードは21.7km/Lから21.3km/Lへと若干落ちている。セッティングを変更することで、従来モデルより低速走行時の燃費値が改善されたのかもしれない。参考までに、従来モデルのe:HEV仕様(FFのXグレード)の満タン法による燃費値は20.3km/Lだった。
今回行われた一部改良の最大のポイントは、パワーユニットがe:HEV仕様のみに統一された点だろう。一部改良前まではターボ仕様のエントリーグレードが約320万円で用意されていたが、ターボ仕様の廃止と、このご時世の値上がりによって最廉価のe:HEV仕様(FFのXグレード)でも370万円を超えてしまった。
最新モデルには従来と同じく、XとZの2グレードが設定されている。さらに、ZグレードをベースにしたBLACK STYLEとCROSS TOURINGの2種類の特別仕様車がラインナップされた。詳細は後述するが、この2車には北米仕様と同じハニカムパターンのフロントグリルが与えられ、従来からの縦格子グリルよりもスポーティでアグレッシブな印象が強まっている。
BLACK STYLEは、ハニカムパターン・フロントグリル(ベルリナブラック)、フロントバンパーガーニッシュ/バンパーコーナープロテクター/サイドガーニッシュといった専用エクステリアパーツ(クリスタルブラック・パール)、ホイールアーチプロテクター/シャークフィンアンテナ/ドアミラー/アウタードアハンドル、18インチアルミホイール(ベルリナブラック+ダーク切削クリア塗装)を装備。ディーラーオプションでブラックエンブレムも装着でき、まさに黒ずくめのバージョンだ。
CROSS TOURINGは、ハニカムパターン・フロントグリル(マットグレー・メタリック)、フロントバンパー/バンパーコーナープロテクター/フロントバンパーガーニッシュ/フロントバンパーロアーガーニッシュ/サイドロアーガーニッシュ/18インチアルミホイール(マットブラック)といった専用エクステリアパーツを装備。BLACK STYLEとは対照的に明るいイメージの仕上がりとなっている。ホイールアーチとボディ下まわりのガーニッシュ類がボディ同色から無塗装樹脂に変更され、ツヤ消しアルミホイールと相まってアクティブな印象を強調。専用外板色としてデザートベージュPが設定されているのも見逃せない。
CROSS TOURINGのインテリアを覗くと、シート表皮はベース車と同じ本革だが、明るいベージュ系のグレージュに彩られてカジュアルな雰囲気に仕立てられている。
フロントシートは肩までサポートしてくれる十分なサイズを誇り、表皮の張りは強すぎず、押し返される感覚もない。また、本革なのに滑りやすいと感じることもなかった。シートだけでなく、ステアリングホイールやドアトリムにも淡いオレンジステッチが施されていて作り込みの良さを感じさせる。寒い季節に重宝するヒーターは前後席に組み込まれている。
いざ試乗してみると、運転席からはボンネットフードが広範囲にわたって見える。おかげで車両感覚が把握しやすい反面、絶えずノーズを意識させられて「大きなクルマを扱っている」と負担に感じる人もいるかもしれない。
前後方向に広い後席は前倒しとともに沈み込む機構を有していてラゲッジ床面との段差を抑えるよう設計されている。
その影響なのか、室内フロアに対して座面が水平で低く、オトナが座るとヒザが浮いてしまう点がちょっと惜しい。せめて座面先端が現状より数十mm高ければ快適性は上がりそうだ。
乗り味はコツコツとした印象があり、路面の段差や舗装痕を拾う傾向が強い。また、高速時を除いてエンジンは発電に特化するため、車速とエンジン回転数がマッチしない場面もあるが、決して耳障りと感じることはなかった。むしろタイヤが低いロードノイズを発する頻度が多く、路面の舗装状況によって静粛性の差は大きい。
今回の改良で2種類の特別仕様車が加わったこともあり、ZR-Vの選択の幅は広がった。ヴェゼルとCR-Vに挟まれているものの、販売台数の多いCセグメントに属していて稼ぎ頭に成長しても不思議ではない1台だ。あとはホンダ自身が販売増にどれだけ注力するかにかかっている。
しんりょうみつぐ 1959年3月20日生まれ。関西大学社会学部マスコミ(現メディア)専攻卒業後、自動車業界誌やJAF等を経て、「ニューモデルマガジンX」月刊化創刊メンバー。35年目に入った。5年目から編集長。その後2度更迭され2度編集長に復帰、現在に至る。自動車業界ウォッチャーとして42年だが、本人は「少々長くやり過ぎたかも」と自嘲気味だ。徹底した現場主義で、自動車行政はもとより自動車開発、生産から販売まで守備範囲は広い。最近は業際感覚で先進技術を取材。マガジンX(ムックハウス)を2011年にMBOした。
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